これまでのマクロ経済学を中心とした一連の研究では、経済構造の「レジーム(状態)」によって、金融・財政政策の効果が大きく異なる、という結果がコンセンサスとなりつつある。先行研究では、こうしたレジームについて、制度上の状態(プラザ合意の前後)、経済金融上の状態(ゼロ金利時期、積極財政時期、金融危機の時期)といった決め方をしたり、レジーム変化を組み込んだ計量モデルをマクロ経済変数の時系列データにあてはめることによって、各レジーム時期を特定しています。そうして各レジームの時期を特定したうえで、各時期における政策効果を推計するという分析方法が採られています。
レジームによる政策効果の違いの検証は、マクロ変数の動きのみから特定されたレジームを所与としてしまいがちですが、それでは、レジームの違いによる政策効果の真の違いを見誤る可能性があります。そこで、本プロジェクトでは、マクロ経済データだけでなく、ミクロ金融データ、金融市場における高頻度データ等を用いて、半世紀に亘る経済動向を整理し、経済構造がどのように変化してきたかを分析します。同時に、日本における金融・財政政策について半世紀の総括を多角的に行い、政策効果の定量的な分析を行うことにより、次世代に在るべき金融・財政政策の姿を提言します。
経済学では、格差の研究は長く賃金や所得といった経済格差を中心に展開してきました。しかし近年、その関心は教育格差、健康格差、情報格差、インフラ格差へと大きく広がっています。また、格差が生成・存続するメカニズムを解明するために、歴史データを用いた研究や世代間連鎖に注目した研究も進展しています。ただし、これらの研究は個別の分野で行われているため、各分野の知見が共有され、総合的に検証される機会は極めて少ないのが現状です。
本プロジェクトでは、各分野で得られた知見を俯瞰し、これまでのアプローチの成果と問題点を明らかにした上で、分野間の連携による総合的な研究を進めます。そして、利用可能なデータを駆使、あるいは新たなデータを構築して、多次元の格差を計測し、その相互関係を明らかにしつつ、社会厚生に関わる格差とは何か、その生成・存続・解消のメカニズムは何かを探求します。また、日本における格差の現状とその問題点を冷静かつ的確に把握し、エビデンスに基づいた政策を設計するには、歴史的な視点と国際比較の視座が不可欠となります。本研究では、格差研究にかかわる海外研究者とも多彩な共同研究を推進し、比較経済史の観点から日本の格差問題に光を当て、よりよい政策の設計を目指します。
一口に「新興国」といっても、中国・ロシア・南米・東南アジア諸国など、各国の社会経済制度や所得水準はさまざまです。さらに、多くの新興国では公的統計が十分ではなく、より正確な実態の把握には、独自の調査による情報収集が不可欠であるにもかかわらず、そのような情報の獲得可能性が制度的・法的に制限される場合も少なくありません。
本プロジェクトでは、海外研究者や政府機関と連携して調査を実施し、新たなデータを収集するとともに、歴史統計の整備も進め、一国における経済システムの実態とその形成過程を実証的に分析します。そして、このような分析を複数国に関して統一的な分析枠組みのもとに実施し、比較することにより、新興国それぞれの特異性、あるいは各国横断的に共通する要因を解明します。
持続可能な開発目標(SDGs)の第一の目標に、あらゆる地域から絶対的貧困をなくすことが掲げられています。アジア・アフリカの低所得国において貧困削減を実現するには、各国の市場経済を支える複雑な制度や組織を深く理解し、その上で適切な政策をデザインし、推進することが重要です。また、これらの国における絶対的貧困の諸問題の中には、戦前日本が直面した問題と共通の課題も多く見られます。
本プロジェクトでは、アジア・アフリカ地域においてフィールド調査等によって独自のミクロデータを収集し、制度の決定要因や政策の因果効果を実証的に分析するだけではなく、日本をはじめとする先進国の歴史的経験も分析対象に含め、貧困削減を実現するための長期的な開発戦略に関する新たな知見を導きます。