経済制度研究センター(CEI)は、2000年4月に、経済制度および経済政策に関する基礎研究を体系的に行うこと、そして、そのための国際的な研究ネットワークの拠点となることを目的として、一橋大学経済研究所の付属施設として設置されました。当初の研究テーマは、「日本およびアジアの金融システムとコーポレート・ガバナンス」に設定されました。このテーマの下にCEIでは、金融理論と経済発展論の接点において研究を進め、2006年3月をもって最初のプロジェクトを終えました。
2006年4月からは、「東アジア企業のパフォーマンス比較」と「ファミリー企業研究」、さらに2008年4月からは「企業・産業のダイナミクスの実証研究」という3つの研究テーマが設定され、日本およびアジアの企業システムに関するデータベースの構築と企業・産業の生産性の計測が進められました。
CEIの研究活動が10年を超えた2010年4月には、新たに「アジア・アフリカ低所得国における経済発展と制度」という重点研究テーマが加わりました。これに伴い、科学研究費(基盤S)プロジェクト「途上国における貧困削減と制度・市場・ 政策:比較経済発展論の試み(PRIMCED)」(研究代表:黒崎卓)が2010年4月から5年間にわたって実施されました (https://www.ier.hit-u.ac.jp/primced/)。
さらに2016年4月には、「新興国における経済システムの比較制度分析」が主要研究テーマに設定されました。近年その発展が注目されるロシア・中国・インドなどの新興国では、人口規模が経済規模の決定に大きな影響を与えています。このプロジェクトでは新興国の経済システムの統合的な理解に向けて、ミクロデータとメタ分析を駆使した人口動態や企業行動の決定要因の研究が展開されました。
2021年4月からは、新たに「格差に関する総合的研究」が主要テーマに加わりました。世界各地で格差が社会問題となる中、経済格差だけではなく、教育格差や健康格差、情報格差などにも研究関心が広がっています。この研究プロジェクトでは多次元の格差を分析の対象とし、その相互関係、長期的動向、および制度的要因を理論的かつ実証的に探究していきます。
同時にCEIでは、研究の継続性も重視しています。これまでのCEIの研究成果は、多くの書籍・論文の刊行と、国際的な研究者ネットワーク、そして日本およびアジア企業の独自のデータベースの構築、という形で蓄積されています。これらの維持と更新に努めつつ、新たな研究テーマと有機的に結びつけていくことにより、これからも内外の研究者コミュニティの共同研究の拠点として発展していくことを目指します。