大株主・役員データベース 2012
一橋大学21世紀COEプログラム「現代経済システムの規範的評価と社会的選択」(COE/RES) および経済研究所経済制度研究センター (CEI) では,2006年度以来,日本の上場企業の大株主と役員 (取締役・監査役) に関する大規模かつ長期的なデータベースの構築に取り組んできました。その作業は2010年度以降もCEIを中心に継続されていますが,私たちはCOE/RESプログラムの終了を目処に2008年度に大株主データ,経済研究所経済制度研究センターが10周年を迎えた2010年度に役員データをそれぞれ公開し,無償で研究者の利用に供することにしました。これらの拡張・補足作業の成果を加えたバージョンとして,2012年度版を公開します。
COE/RESプログラムは,理論研究と実証研究を両輪として,2007年度まで5年間にわたり,厚生経済学,社会選択論,国際経済学,金融経済学,産業組織論,企業経済学,技術経済学,公共経済学,経済学史など多様な視点から,現代の経済システムの制度設計と政策評価について研究と教育を行い,海外の研究者・研究機関とのネットワーク形成を通じて,世界的な研究拠点を構築してきました。大株主データベースの基幹部分 は,COE/RESプログラムの中で企業システムの研究を担当したC2班のメンバーを中心に,プログラム終了後にも本学に残すべき資産として構築されました。
経済研究所経済制度研究センター (CEI) は2006年4月から,「東アジア企業のパフォーマンス (生産性) 比較」,「ファミリー企業研究」,そして2008年4月からは「企業・産業のダイナミクスの実証研究」の3つのテーマを設定し,研究を進めてきました。役員データベースの基幹部分 は,「ファミリー企業研究」班を中心に,本学に残すべき資産として構築されました。私たちはこのようにデータベースの構築及び拡充を研究活動の重点課題としており,データベースの更なる拡充と利用を今後も続けていきます。
日本の上場企業については,これまでにも日本政策投資銀行の企業財務データベースや東洋経済新報社の役員データベースが有償で利用できましたが,1970年代までの大株主情報と1980年代までの役員情報はまだデータベース化されていません。したがって、私たちが提供するデータベースは,有価証券報告書等の資料に基づいて,市販されている年次以前のデータを収集・整理することにより,日本企業のガバナンスや同族経営に関する長期的視点からの実証研究に,重要な基盤を与えるものと期待されます。このデータベースを上記の市販のデータベースと接続すれば,1950年から現在までのすべての上場企業の大株主・役員情報 (役員は1962年から) を揃えることができます。
大株主データについては,1980年以前に上場した2,108社を対象に,上場以降の大株主 (首位から10位まで) の名称と持株比率および保有主体別 (個人,金融機関,事業法人等) 持株比率を収集・整理しました。役員データベースについては,1990年以前に上場した銀行以外の企業1,787社と銀行140社を対象として,上場以降の全取締役・監査役の氏名・誕生日・学歴 (卒業学校・学部) ・入社年・現在の役職・代表権の有無・取締役就任後の経歴・入社前歴を原則として隔年で収集しています。
当面は,利用者の希望に応じてデータベースをお送りする形式としますが,近い将来に,利用希望者が利用者IDとパスワードを使ってデータの検索とダウンロードを自由に行える形を整えたいと思います。本データベースの利用規定と利用申請書の作成にあたっては,神戸大学経済経営研究所附属政策研究リエゾンセンターの企業資料データベースに関するウェブサイトを参考にさせていただきました。
私たちが構築しているデータベースが,今後多くの研究者に利用され,長期的視点からの日本企業の実証研究が発展することを望みます。
2012年5月24日
担当教員: 経済制度研究センター 黒崎 卓
経済学研究科 岡室 博之
大株主・役員データベースの作成については,以下の助成を得ました。
上記年度は、入力データの出所に基づく年度です。(実際のデータの年度とは異なります)